山陽リレーコラム「平井の丘から」

「おもてなし」の落とし穴  松浦 美晴

掲載日:2018年11月12日
カテゴリ:生活心理学科

 秋も深まり、のんびりお茶を飲みたい気分です。

 セルフサービスの喫茶店でお茶を飲みました。カップの乗ったトレイを回収場所に持って行こうとしたら、そばにいた店員さんが「いいですよ、そのままで」といってくださったので、そのままにして店を出ました。

 セルフサービスなのに、食器を自分で片付けなくてすんで、ラッキー?

 「おもてなし」という言葉がもてはやされています。日本の店はすべからく、高級店並みのきめ細かなサービスをしてくれる。日本の企業は、通常の業務を越えた柔軟な対応をしてくれる。日本人には他者を気遣う「おもてなし」の心があるからだ、というのです。確かに、店員さんは、私を気遣い、食器を下げてくれました。

 そうなると、消費者としての私は厚かましくなってしまいます。少しでもお金を払ったなら、とことんサービスしてほしい。無理をいえば聞き入れてもらえるのだから要望をどんどん上乗せしよう、と。いやちょっと待ちましょう。本来の対価を越えたサービスは、さらなる対価を必要とするはず。それが無料で提供されてしまうのが「おもてなし」では?おもてなしを期待して、お客さんは増えるでしょう。無料のおもてなしを提供するために、店員さんは大忙し!

 厚生労働省によれば、日本の労働者一人当たりの労働生産性は、主要国の中でも低い水準にあるそうです。日本の労働者の時間と労力が、お金を産まない仕事に浪費されているということです。これから労働人口が減ってゆくというのに、困ってしまいます。店員さんのおもてなしを無料で受けた私は、労働生産性の低下に加担したわけです。

 しまった!

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